ためさんの投資ブログ

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実質コストで「楽天・全米株式インデックス・ファンド」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の比較はできない理由

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皆さんこんにちは、資産ためぞう(@sstamezo)です。

 

楽天VTIの実質コスト(隠れコスト)が判明した

 

楽天・バンガード・ファンドから発表された、楽天・全米株式インデックス・ファンド 【楽天・バンガード・ファンド(全米株式)】(以下、楽天VTI)の第1回決算報告書で実質コストが判明したと、投資家界隈では話題のようです。

 

実質コストが判明すると、今まで公にされていなかった信託報酬以外の隠れコストも判明します。

 

楽天VTIの実質コストの数値

 

もともと、楽天VTIの信託報酬は0.1696%と公表されていました。今回の報告では、実質コストは0.311%あり、その結果、信託報酬以外の隠れコストが0.142%であることが判明しました。

 

分かりやすく計算式にすると、

 

0.311%(実質コスト)−0.1696%(信託報酬)=0.142%(隠れコスト)

 

ということになります。

 

 

この0.311%という実質コストと、0.142%という信託報酬以外の隠れコストが、意外と高いのではないかという意見が多いようです。

 

 

ちなみに、全世界株式の「楽天VT」の実質コストは0.502%新興国株式の「楽天VWO」の実質コストは0.601%とです。いずれも楽天VT以上に高めでした。

 

 

避けられないeMAXIS Slim米国株式(S&P500)との比較

 

この結果を受けて話題に上がって来るのは、楽天VTIのライバルである、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)との比較です。

 

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は登場してからまだ一年が経過していないので、決算報告書がありません。そのため、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の実質コストや信託報酬以外の隠れコストは判明しておりません。

 

しかし、他のeMAXIS Slimシリーズの商品の実質コストを参考にする限り、今回の楽天VTIの信託報酬は高すぎる。よってeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方が良いという意見があります。

 

しかし、本当に実質コストだけで判断しても大丈夫でしょうか?

 

 

楽天VTIとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の比較を実質コストだけでしない方が良い理由

 

実は異なるトータルリターン

 

楽天VTIとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の比較を実質コストだけで判断するには、この2つのベンチマークである、VTI(CRSP USトータル・マーケット・インデックス)とS&P500が、ほとんど同じパフォーマンスであるという前提が必要になります。

 

確かに、過去5年間くらいではほぼ両者互角のパフォーマンスです。しかし、両者のパフォーマンスは長期で比較するほど差が出てきます。

 

それについては、以前記事にしたことがあります。

 

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)と楽天・全米株式インデックス・ファンドの比較 - 低資金からはじめる投資

 

 

 過去5年のリターン比較

米国版のヤフーファイナンスで、ETFのリターンを比較することができます。

VTIとSPYの過去5年間の比較チャート

 

上記が過去5年の比較です。過去5年のリターンを比較する限りでは、ほとんど違いがありません。少しだけS&Pの方がパフォーマンスが良いです。

 

2001年来のトータルリターンの比較

 

しかし、ドットコムバブル崩壊後やリーマンショックの経験も含めた過去20年弱のトータルリターンを含めると、VTIに明らかな分があります。

 

VTIとSPYの過去20年間の比較チャート

※参照URL

VTI Interactive Chart | Vanguard Total Stock Market ETF Stock - Yahoo Finance

 

2001年からのリターンを見ると、VTIが171.82%S&P500が140.94%と、約30%の開きがあります。

 

VTIの手数料が0.04%で、SPYが0.09%(VOOは0.04%)のため、厳密な比較はできません。

 

しかし、VTIとSPYの手数料の0.05%の差だけでは、20年間運用しても30%も開くことはありません。せいぜい1%程度です。

 

何故VTIとS&P500のリターンが同じであると誤解されているのか

 

なぜこれだけ違うVTIとS&P500が、同じパフォーマンスであると誤解されているのか、以下はあくまで私の推測です。

 

VTIと同じバンガード社が作ったS&P500を指標とする商品、VOOが登場したのがちょうど5年ほど前なのです。

 

多くの人はVOOが登場してからの5年間くらいのVOOのリターンをVTIと比較するため、ほとんど差はないと判断するのだと思います。

 

ですが実際は、VOOよりも歴史のあるSPYとVTIの長期リターンで判断すると、差が見えてくるのです。

 

 

企業数が違うので業種の比率も違う

 

VTIは米国の企業約3500社S&Pは主要500社という違いがあります。 

 

それに伴い、セクター(業種)別構成比率も異なってきます。

S&P 500     トータル・マーケット(VTI)  
セクター別の構成比率 (%)   セクター別の構成比率 (%)
情報技術 24.9   金融 20.5
金融 14.7   テクノロジー 19.4
ヘルスケア 13.7   資本財 13.4
一般消費財・サービス 12.7   消費者サービス 13.1
資本財・サービス 10.2   ヘルスケア 12.5
生活必需品 7.6   消費財 8.5
エネルギー 5.7   石油・ガス 5.5
素材 2.9   公益 2.8
公益事業 2.9   素材 2.5
不動産 2.8   通信サービス 1.8

 

 業種の名称が統一されていないので、分かりづらいところが恐縮です。

 

しかし、情報技術(テクノロジー)がS&P500は24.9%なのに対し、VTIは19.4%であったり、金融がS&P500は14.7%なのに対し、VTIは20.5%であったりと、少しずつ異なることが分かるかと思います。

 

 

 

 

以上のように、過去のリターンから見ても、組入れている業種の比率から見ても、S&P500とVTIは似て非なるものであることが分かります。

 

これだけ異なるものを実質コストだけで判断するのは、少し違うのではないかと思います。

 

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楽天VTIとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の実際の現在のパフォーマンスを比較

 

6月18日から投資信託を9本同時購入し、実際のパフォーマンスを比較しています。

 

楽天VTIとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)も保有しているので、2つの現在のパフォーマンスをご紹介します。

 

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eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が4.23%楽天VTIが3.88%となっています。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が少しリードしています。

 

これだけを見ると、やはり「楽天VTIの実質コストが高いから、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)に差がつけられているのではないか」と考えたくなるかもしれません。

 

しかし、もともと最近のS&P500は、最高値を更新するほど調子が良いわけですし、必ずしも実質コストが影響しているとは限りません。

 

S&P500はVTIよりも米国の上位企業が占める割合が高いため、FANGなど成長企業の調子が良ければ、S&P500の調子もVTIより少し良くなるのは当たり前です。

 

保有上位10銘柄と純資産総額に占める割合
S&P500 (%) VTI (%)
Apple Inc.アップル 3.8 Apple Inc.アップル 2.8
Microsoft Corp.マイクロソフト 3.1 Microsoft Corp.マイクロソフト 2.6
Alphabet Inc.アルファベット 2.8 Alphabet Inc.アルファベット 2.3
Amazon.com Inc.アマゾン 2.6 Amazon.com Inc.アマゾン 2.2
Berkshire Hathaway Inc.バークシャーハサウェイ 1.7 Berkshire Hathaway Inc.バークシャーハサウェイ 1.4
Facebook Inc.フェイスブック 1.7 Facebook Inc.フェイスブック 1.4
JPMorgan Chase & Co.JPモルガン 1.7 JPMorgan Chase & Co.JPモルガン 1.4
Johnson & Johnsonジョンソンエンドジョンソン 1.5 Johnson & Johnsonジョンソンエンドジョンソン 1.3
Exxon Mobil Corp.エクソンモービル 1.4 Exxon Mobil Corp.エクソンモービル 1.2
Bank of America Corp.バンクオブアメリカ 1.3 Bank of America Corp.バンクオブアメリカ 1.1
純資産総額に占める上位10銘柄の割合 21.6 純資産総額に占める上位10銘柄の割合 17.7

 

 

 

さいごに

 

長くなりましたので、今回はこのくらいにしておきます。

 

ようするに言いたかったことは、今回の楽天VTIの実質コスト(隠れコスト)が予想以上に高かったからといって、そんなに動揺するものではないということです。

 

過去のトータルリターンを見る限りでは、もともとVTIに分があります。

 

もちろん、それはあくまで過去20年弱のデータなので、今後数十年はS&P500の時代になる可能性もあります。

 

今後両者のリターンがどうなるのかは分かりませんが、上述した通り、実質コストの差だけで判断できるほど、両者は同じ長期パフォーマンスをしているわけではないのです。

 

実質コストという、そのわずかな差が大きく影響してくるほど、多額の資金を運用するのだったら、日本の投資信託ではなく、直接米国ETFを買い付けたほうが手数料が安く済むはずです。

 

 

もっとも、VTIとS&P500は、両者とも一番信頼でき、コアな投資先としておすすめであることは間違いありません。

 

 

最後に、関連記事のリンクです。

www.shisantamezo.com